じめじめ日和

読書や見た映画などの記録をしています。

『西の魔女が死んだ』

 

梨木香歩

西の魔女が死んだ

 

1994年出版だそう。

中学の頃の推薦図書だったような気がする。タイトルこそよく聞いたけど読んだことがなかった。

 

不登校宣言をした少女まいが、母親の勧めでおばあちゃんの家で過ごした頃の思い出のお話。まいが魔女と呼んでいるおばあちゃんは、魔女修行としてまいに精神力を鍛えることを勧め、自分で決断する大切さを教える。おばあちゃんとジャムを作ったり、洗濯をしたり、自然の中での生活を通してまいが生きる力を取り戻していくような物語。

おばあちゃんの教えはどれも、生きていくために必要な考えだなと納得できた。自分で決める、外からの刺激に反応しない。そして、自分が楽に生きられる場所を求めることを後ろめたく思う必要はない。などなど、おばあちゃんの教えは魅力的なまでの強さがあった。

まいももともと精神力が弱かったというわけではなく、学校に行かないと決めた経緯を話す場面からも、最も根本には自分なりの考えをもつ芯のある子だとわかる。田舎での魔女修行は転地療養でもあったのだろうけど、自分の価値観を大切にしつつ社会と調和していくための勉強会のような感じでもあった。

 

豊かな自然が想像できるほど、優しくひとつひとつ繊細に描かれている。自然に包まれながら過ごした日々と、少しの心残りが残酷なほど鮮明に感じられた。暖かかったからこそ、痛みが鋭くなる。

まだ記憶に新しい自分のおばあちゃんとのお別れを思い出して泣いた。まだ私はこれから何度も、おばあちゃんを思って泣くだろう。きっとまいも同じ気持ちを抱えて生きている。

 

思い出すのはつらすぎたけど、それでもこの本を読んだ後は悲しさだけではなく、温かさも感じることができた。それは巻末の解説にもあったように、死が悲しいだけのものではないというおばあちゃんのメッセージがあったから。魂と魂の間を隔てるものがなくなるのだ、と。まださすがにそこまでは理解ができないけど。

それに、まいのおばあちゃんの教えが、私とおばあちゃんをつなぐものになるような気がしている。私が元気に生きていくことがおばあちゃんのためにできることだと信じて、私も魔女修行なるものをしてみようと思う。